猫野詩梨帳

かわいいはかしこい

古典ギリシア語初歩メモ(27 課 〜 31 課)

このメモは練習問題の正答ではないので,必ず↓の記事を先に読むこと.

cylomw.hatenablog.com

また,はっきり言っておくが*1,ここにメモを残すのは古典ギリシア語を学んでいる・学びたい者たちのためであって,単位が欲しいだけの学生のためではない.勝手に使う分には自由であるが.

27 課

27-1. もし君が若い妻を娶っていたら,既におじいさんになっていただろう.

ἔγημας (1aor.sg.2.) ← γαμέω((妻を)娶る;動詞幹 γαμ-).ἦσθα (impf.sg.2.) ← εἰμί.εἰμί にはアオリストがないため未完了過去を用いていると考えられる.そもそも事実に反する仮定の条件文に於いて,未完了過去とアオリストはそれぞれ単に継続的か1回的かという動作態(相,アスペクト)の相違のみを表す (Ciesko 8§53.4).現在 / 過去の事実に反する仮定とは,そのそれぞれの動作態から現れるものである.

27-2. その場にいなかった,そして自国にとどまってさえいなかった私が,いかにして(なぜ)君を害したのか(,害していない).

前文のない,事実に反する仮定の条件文と考えられる.παρὼν (part.m.sg.nom.) ← πάρειμι(その場にいる),この動詞の変化は εἰμί を参照.ἐπιδημῶν (part.m.sg.nom.) ← ἐπιδημέω(自国にとどまる).2つの分詞は否定を伴って ἐγώ を限定的に修飾していると考えた (§100).ἠδίκησα (1aor.sg.1.) ← ἀδικέω(不正を働く,[対格]を害する,傷つける,中傷する).σ' ← σέ.

27-3. 我々が君たちに笛を吹いたが,君たちは踊らなかった.我々が挽歌を歌ったが,君たちは泣かなかった.

ηὐλήσαμεν (1aor.pl.1.) ← αὐλέω(笛を吹く).ὠρχήσασθε ((mid.)1aor.pl.2.) ← ὀρχέομαι(踊る).ἐθρηνήσαμεν (1aor.pl.1.) ← θρηνέω(挽歌を歌う,嘆く).ἐκλαύσατε (1aor.pl.2.) ← κλαίω(泣く).

κλαίω の動詞幹は κλαυ- であるが,現在幹は κλαι-ε/ο- または κλᾱ-ε/ο-(古いアッティカ方言形)となる(母音融合しない).よって現在 κλαίω または κλάω(α のマクロン省略),未完了過去 ἔκλαιον または ἔκλᾱον,第一アオリスト ἔκλαυσα.

また κλαίω の未来は中動相を能動の意味で用いて κλαύσομαι であるが,アッティカ方言では κλαιήσω または κλᾱήσω という形もあった.これは,κλαύσομαι が「泣くことになるぞ」(脅し)の意味で用いられるようになったためである (Ciesko 7§58).

※ κλαίω の動詞幹は正確には κλαϝ-(ϝ はディガンマという古いギリシャ文字音価は [w])であり,このためにやや奇妙な変化となる.同様の変化をする動詞に καίω(焼く;動詞幹 καϝ-) がある (Ciesko 7§58).

27-4. というのも,今も最初も人々は驚くこと故に(によって)哲学することを始めたからである.

ἤρξαντο (mid.1aor.pl.3.) ← ἄρχω(支配する,[中]始める).

27-5. そして彼(アルタクセルクセース)が,それ(ティッサペルネースの中傷)に従い,殺すためにキューロスをとらえる(とらえた).しかし母が彼をもらい下げ,再び領地の方へ送り返す(送り返した).

24-10 と同様に歴史的現在を用いた文.ἀποκτενῶν (fut.part.m.sg.nom.) ← ἀποκτείνω(殺す),動詞幹 ἀποκτεν- より未来形に注意 (§81).ἐξαιτησαμένη (mid.1aor.part.f.sg.nom.) ← ἐξαιτέω(要求する,[中]もらい下げる).

27-6. もし神が人々の祈りに従っていれば,(人々が)ひっきりなしに互いに対して多くの困難なことを祈るために,多くの人々はより速く滅びているだろう.

θᾶττον は形容詞 ταχύς(速い)の比較級 θάττων(マクロン省略)の中性単数対格形からつくられた副詞の比較級.κατηκολούθει (impf.sg.3.) ← κατακολουθέω(従う).ἀπώλλυντο (mp.impf.pl.3.) ← ἀπόλλῡμι(ほろぼす,破壊させる,[中]ほろびる,死ぬ).εὐχόμενοι ((mp.)part.m.pl.nom.) ← εὔχομαι(祈る).

ἀπόλλῡμι は未完了過去 ἀπώλλῡν.能動相現在及び能動相未完了過去では単数形で ῡ,複数形で υ;中・受動相では単数でも複数でも υ を用いる (δείκνῡμι と同様).よって中動相未完了過去は ἀπωλλύμην.また未来 ἀπολῶ,第1アオリスト ἀπώλεσα,第1完了 ἀπολώλεκα.

27-7-1. 法は言うだろう,「おおソクラテスよ,我々(法)にとって,我々(法)とポリスが君の気に入っていたということ,その証拠は大きい.

ἠρέσκομεν (impf.pl.1.) ← ἀρέσκω([与格]の気に入る,を喜ばす).また注にあるように φαῖεν (opt.pl.3.) ← φημί,可能性の希求法 (§121.2, §124).法が喋るようなことがあればこう言うだろう,という気持ちがあるのかもしれない.

27-7-2. というのも,もしとくに君の気に入っていないのであれば,他のすべてのアテーナイ人たちと異なり,それ(ポリス)の中に君がとどまっていないだろうからである.」

ἀπάντων (m/n.pl.gen.) ← ἄπᾱς(すべての).ἤρεσκεν (impf.sg.3.) ← ἀρέσκω.ἐπεδήμεις (impf.sg.2.) ← ἐπιδημέω(自国にとどまる).現在の事実に反する仮定.ποτέ(前接辞)は「いつ (when),いつか (someday),いったい(疑問代名詞を強めて;一体全体)」であるが,無理に訳さなくていいだろう.君がいつか出て行ってしまうようなことがなく他のアテーナイ人たちと同様にポリスに留まっていたということは,君がポリスを気に入っているという証拠だ.

28 課

28-1. もし君が欲するならば,君はできるだろう.

実現可能な未来の仮定 (§116.1).βούλῃ ((mp.)subj.sg.2.) ← βούλομαι(欲する),mp.ind.sg.2. と同形なので注意.δυνήσῃ ((mid.)fut.sg.2.) ← δύναμαι(できる),mid.subj.1aor.sg.2. と同形なので注意.

28-2. そして彼らは(私は)暗くなるまでそれらを作っていた(していた).

ἐποίουν (impf.sg.1. / pl.3.) ← ποιέω(つくる,する).ἐγένετο ((mp.)impf.sg.3.) ← γίγνομαι(生じる,生まれる,……になる).

28-3. たとえ彼が幸運であるように思われても,彼が死ぬのを見るまで君は妬むな.

εὐτυχεῖν (inf.) ← εὐτυχέω(幸運である).δοκοῦντα (part.m.sg.acc.) ← δοκέω(思われる,よいと思われる,決議する),ここでは譲歩の分詞と考えた (§101.5).δοκέω 対格 + 不定詞 構文だが,対格部分(不定詞の主語)は τὸν だけで具体的に書かれてはいないため,適当に「彼」と訳した.ところで δοκέω は非人称動詞としても用いられるが,その場合分詞は中性単数対格になるはずなので (§108.2),ここでは単に「彼」が主語になっているのであろう.

注にあるように ζήλου (imp.sg.2.) ← ζηλόω(羨む,妬む).θανόντ' ← θανόντα (2aor.part.m.sg.acc.) ← ἔθανον (2aor.) ← θνῄσκω(死ぬ),この分詞の主語にあたる部分は τὸν のところなので m.sg.acc. であると考えられる.ἴδῃς (subj.2aor.sg.2.) ← εἶδον (2aor.) ← ὁράω(見る).

28-4. 富が,悪い人間や,心がふさわしくない人についていく時はいつでも,飽満は確かに傲慢を産む.

ὅταν を用いた現在の一般的な仮定 (§116.2, §117).ἕπηται ((mp.)subj.sg.3.) ← ἕπομαι(従う,ついていく).ᾖ (subj.sg.3.) ← εἰμί.

28-5-1. 生きているあいだ,そして(そのようなことが)出来るあいだは,哲学することを,そして君たちに(哲学することを)命ずる(勧める)ことを,そして常に君たちの(うちの)私がたまたま出会った人々全てに示すことを私は決して止めないだろう,

ἕωσπερ は,ἕως(……するまで,する間)に強調の前接辞 πέρ がついた合成語.οἷάπερ も同様,οἷα (n.pl.nom./acc.) ← οἷος + πέρ(前接辞).ἐμπνέω (subj.sg.1.) ← ἐμπνέω, ind.sg.1. と同形なので注意.πνέω は2音節の -έω 動詞なので,ει 以外には融合せず,合成動詞 ἐμπνέω (ἐν-πνέω) においても同様 (練習 14.6 の注を参照).ὦ (subj.sg.1.) ← εἰμί; οἷός τε εἶναι で「〜できる,能力がある」.

φιλοσοφῶν (part.m.sg.nom.), παρακελευόμενός ((mp.)part.m.sg.nom.), ἐνδεικνύμενος (mp.part.m.sg.nom.) は παύσωμαι (mid.subj.1aor.sg.1.) の補語 (§110.1).注にあるように,οὐ μή + 接続法アオリストで未来の強い否定を表している.また ἐνδεικνύμενος は中動相だが,「示す」でよいようだ.

ἕωσπερ ≒ ἕως を用いて,反復されることがらを表す文 (§149.2) .主文が本時称(接続法や命令法は常に本時称と見做される: Ciesko 8§67)なので,従属文は接続法と ἄν をとっている.

28-5-2. 「おお,ポリスの(中で),知と力において最大のそして最も評判のいい男たちの中で最良のアテーナイ人よ,一方君は金銭や名声や名誉が君にとってできるだけ最も多くなるように気をつけていることを恥じないが,他方君は思慮分別や真実や魂ができるだけ最もよくなるように気をつけたり,熟慮したりしない.」という,私がいつも言っているようなことを言うことによって(示すことを私は決して止めないだろう).

注にあるように,εἴωθα (2perf.sg.1.) ← ἔθω(……する習慣がある).完了は,ある動作が完了して,その結果が現在に及んでいることを示す時称 (§159) であり,「〜し終えている」「(なんらかの動作の結果)〜している」と訳す.ここでは注にあるように λέγειν (inf.) を補って,「言うことが習慣になっている」→「いつも言っている」と訳した.

ὤν (part.m.sg.voc.) (← εἰμί) は名詞扱いされた分詞と考え,「(〜男たちの中で)最良のアテーナイ人であるものよ」→「最良のアテーナイ人よ」と訳した.

αἰσχύνῃ(マクロン省略)(mp.sg.2.) ← αἰσχύνω(マクロン省略)(恥をかかせる,[中]恥じる([分詞]しているのを恥じる,[不定詞]することを恥じる: Ciesko 8§28.1)).ἐπιμελῇ ((mp.)sg.2.) ← ἐπιμελέομαι(気をつける,注意する).ὅπως + 直説法未来 は,配慮や努力を表す文 (§144).

χρημάτων, δόξης, τῑμῆς, φρονήσεως, ἀληθείᾱς, ψῡχῆς は全て属格となっているが,これはこれらが(主語になっているのではなく)ἐπιμελούμενος ((mp.)part.m.sg.nom.) 及び ἐπιμελῇ の目的語になっているためと考えられる;ἐπιμελέομαι は対格や不定詞の他に属格もとるらしい (to take care of).「できるだけ金銭や名声や名誉が最も多くなるように(最も多くの金銭や名声や名誉が存在するように),金銭や名声や名誉の世話をすることを恥じない」かな? 実際よくわからない.俺たちは雰囲気で属格をやっている.

29 課

29-1. 私はあなたの言葉に従わないだろう.

πιθοίμην (mid.opt.2aor.sg.1.) ← πείθω(説得する;[中・受](与格と)……に従う).σοῖς (m.pl.dat.) ← σός(あなたの)(§143).

29-2. 君は星々を眺めている,私のアステール.多くの目で君を眺めるために私が天になれればよいのだが.

γενοίμην ((mp.)opt.2aor.sg.1.) ← ἐγενόμην ((mp.)2aor.) ← γίγνομαι(生じる,生まれる,……になる).願望・可能性の希求法 (§121) は常に本時称と見做される (Ciesko 8§67) ので,ὡς 以降の目的表現の従属文は接続法になるはずである (§123).即ち βλέπω は subj.sg.1. であると考えられる.βλέπω εἰς ...(……を見る,眺める).

29-3. その時キューロスには王宮と,野生の野獣に満ちた大きい猟園があった.彼は,彼自身と彼の馬が訓練することを欲する時はいつでも,馬からそれらを狩っていた.

ἦν (impf.sg.3.) ← εἰμί.γυμνάσαι (1aor.inf.) ← γυμνάζω(鍛える,訓練する).βούλοιτο ((mp.)opt.sg.3.) ← βούλομαι(欲する),過去の一般的な仮定 (§124.2, §125).ἃ (n.pl.nom./acc.) は関係代名詞;ここでは θηρίων を指していると考えた.

29-4. 増大したペルシア人たちの国事が,(一方)クロイソスの悲嘆を止め(クロイソスを悲嘆から離れさせ),(他方)(以下の)考えの中に立ち至らせた.なんとかして,(力の)大きいペルシア人が生じる前に,彼の力の増大を抑止することができればなあ(という考えに至らせた).

ἀπέπαυσε (1aor.sg.3.) ← ἀποπαύω([属格]を止めさせる).ἐνέβησε (1aor.sg.3.) ← ἐμβαίνω (ἐν-βαίνω).δύναιτο ((mp.)opt.sg.3.) ← δύναμαι(できる).γενέσθαι ((mp.)2aor.inf.) ← ἐγενόμην ((mp.)2aor.) ← γίγνομαι(生じる,生まれる,……になる).καταλαβεῖν (2aor.inf.) ← καταλαμβάνω(とらえる,抑止する).

29-5.

ソークラテース:悪いことの(中で)最大のことは,(たまたま,)不正を働くことである.

ポーロス:本当にそれが最大なのか? 不正を受けることがより大きいのではないのか?

ソ:少なくともそうでは決してない.

ポ:すると君は不正を働くことよりもむしろ不正を受けることを欲するのだろうか?

ソ:私はそのいずれも欲しないだろう.しかし,もし不正を受けることか不正を働くことが避けられないのであれば,私は不正を働くよりもむしろ不正を受けることをとるだろう.

ὂν (part.n.sg.nom.) ← εἰμί.τυγχάνω ὤν ... : たまたま……である;「意外にも」としてもいいのかもしれない.ἦ γάρ: 本当に……か.ἔγωγε は ἐγώ の強調形.εἴη (opt.sg.3.) ← εἰμί.ἑλοίμην (mp.opt.sg.1.) ← εἷλον (2aor.) ← αἱρέω(取る,つかまえる).

30 課

30-1. ソーソスとソーソーは,救済者よ,あなたにこれを奉納しました,ソーソスは救われたために,ソーソーはソーソスが救われたために.

ἀνέθηκαν = ἀνέθεσαν (2aor.pl.3.) ← ἀνατίθημι(奉献する,奉納する).σωθείς (pass.1aor.part.m.sg.nom.) ← ἐσώθην (pass.1aor.) ← σῴζω(救う).

30-2. もし私が死の影の中央に行くならば(行ったとしても),私は悪いこと(災い)を恐れないだろう,あなたが私と共にいるから.

φοβηθήσομαι (pass.1fut.sg.1.) ← φοβέω(恐れさせる,[中・受]恐れる).εἶ (sg.2.) ← εἰμί もしくは εἶμι.

30-3. キューロスは,危険をおかし侮辱され立ち去った時に,もはや決して兄の手中に落ちないよう熟慮する.しかし,もしできるなら,彼のかわりに王であるだろう.

24-10, 27-5 と同様に歴史的現在を用いている.配慮や努力の文を導く ὅπως (§144).ἢν = ἐάν(マクロン省略)(§116.1).ἀπῆλθε (2aor.sg.3.) ← ἀπέρχομαι(立ち去る).κινδῡνεύσᾱς (1aor.part.m.sg.nom.) ← κινδῡνεύω(危険をおかす).ἀτῑμασθείς (pass.1aor.part.m.sg.nom.) ← ἠτῑμάσθην (pass.1aor.) ← ἀτῑμάζω(侮辱する).δύνηται ((mp.)subj.sg.3.) ← δύναμαι(できる).

30-4. というのも,もしある人が歴史から「なにゆえに」「いかにして」「なされたことは,誰のためになされたのか」「結果(目的)が合理的であるか否か」を取り去ったならば,後に残るものは歴史の(単なる)作品であり,教訓になるものではなく,そして直ちには(人々を)喜ばせるが,未来に向かって(今後)誰をも助ける(誰かの益になる)ことはまったくないからである.

ἱστορίᾱς (f.sg.gen.) は分離の属格.χάριν は注を参照.ἀφέλῃ (subj.2aor.sg.3.) ← ἀφαιρέω(取り去る).ἐπράχθη(マクロン省略)(pass.1aor.sg.3.), πρᾱχθὲν (pass.1aor.part.n.sg.nom.) ← πράττω(マクロン省略)(行う,なす)(動詞幹 πρᾱγ-).ἔσχε (2aor.sg.3.) ← ἔχω(持つ,……の状態である).

30-5-1. オルペウスの妻,エウリュディケーが蛇に咬まれて死んだ.

δηχθεῖσα (pass.1aor.part.f.sg.nom.) ← ἐδήχθην (pass.1aor.) ← δάκνω(咬む).ἀπέθανεν (2aor.sg.3.) ← ἀποθνῄσκω(死ぬ).

30-5-2. オルペウスは冥府へ下り,彼女を送り返すようプルートーンを説得した.

κατελθὼν (2aor.part.m.sg.nom.) ← κατέρχομαι(下る,下りる).ἔπεισεν (1aor.sg.3.) ← πείθω(説得する).ἀναπέμψαι (1aor.inf.) ← ἀναπέμπω(送り返す).

30-5-3. 彼(プルートーン)は,(オルペウスが)行く(帰る)時に,もし家の中へ着く前にオルペウスが振り向かなければそれをすると約束した.

ὑπέσχετο ((mid.)2aor.sg.3.) ← ὑπισχνέομαι(約束する).ἐπιστραφῇ (pass.subj.2aor.sg.3.) ← ἐπιστρέφω(向きを変える,回す;[中・受]ふりむく).παραγενέσθαι ((mid.)2aor.inf.) ← παραγίγνομαι(そばにいる,来る,着く).πρίν + 不定詞 は §150.1 を参照;主文が肯定文ではない気がするが,よくわからん.

30-5-4. しかし彼はそれに従わずふりむいて妻を見た,そして彼女は再び冥府へ連れて行かれた.

ἀπιστῶν (part.m.sg.nom.) ← ἀπιστέω(信じない,従わない).ἐπιστραφεὶς (pass.2aor.part.m.sg.nom.) ← ἐπιστρέφω.ἐθεάσατο(マクロン省略)((mid.)1aor.sg.3.) ← θεάομαι(見る,見物する).κατηνέχθη (mid.1aor.sg.3.) ← καταφέρω(下方へ運ぶ).

31 課

31-1. 詩人たちの(うちの)ある人々が,いかに生きねばならぬかという助言を後に残している.

καταλελοίπᾱσιν (2perf.pl.3.) ← καταλείπω.このように完了幹の形成の際 ε から ο への母音交替が発生することがある(また語根末尾は帯気音化することがある;例 κλέπτω (κλεπ-) → κέκλοφα) (Ciesko 7§1.3).ζῆν (inf. この動詞は特別の母音融合を行う;練習 14 の単語リスト参照) ← ζάω.ὡς は関係副詞のように使われることがある.

31-2. そして私にとってそうなっていることは予期しないものではなかった,あなたがたが私に有罪の投票をしたから.

γέγονεν (2perf.sg.3.), γεγονὸς (2perf.part.n.sg.nom.) ← γέγονα (2perf.) ← γίγνομαι.γίγνομαι は完了・過去完了にのみ能動相が存在するがどの相でも意味はほとんど変わらない;未来とアオリストに存在する受動相も同様.τὸ γεγονὸς τοῦτο((そう)なっているそれ or その(そう)なっていること)が主語と考えられる.

31-3. ソクラテスは夜明けになり太陽が昇るまで立っていて,それから太陽に祈りを捧げ立ち去った.

ἕως は名詞「夜明け,暁」の方なので注意.εἱστήκει (1plup./2plup.sg.3.; §165 にあるように ἵστημι は単数では第1完了・第1過去完了,複数では第2完了・第2過去完了の形となる) ← εἱστήκη (1plup./2plup.; 立っていた) ← ἵστημι.ἐγένετο ((mid.)2aor.sg.3.) ← γίγνομαι.ἀνέσχεν (2aor.sg.3.) ← ἀνέχω (ἀνά-ἔχω).ᾤχετ' ← ᾤχετο ((mp.)impf.sg.3.) ← οἴχομαι.ἀπιὼν (part.m.sg.nom.) ← ἄπειμι.προσευξάμενος ((mid.)1aor.part.m.sg.nom.) ← προσεύχομαι.

31-4. 我々は神の誓いを堅持しているが,敵達は偽誓し,そして誓いに反して休戦条約を破っている.

31-5. しかし私は,我々が一度,怠慢に生きることや豊富の中で暮らしを立てること,メーディアー人やペルシア人の美しく大きい女たちや乙女たちと交際することを学んだら,(記憶を喪失させるというロートスの実を食している)ロートパゴイのように,家への道を忘れてしまうのではないかと実に恐れている.

δέδοικα (1perf.sg.1.) ← δείδω.μάθωμεν (subj.2aor.pl.1.) ← μανθάνω.ἐπιλαθώμεθα ((mid.)subj.2aor.pl.1.) ← ἐπελαθόμην ((mid.)2aor.) ← ἐπιλανθάνομαι.γυναιξί (f.pl.dat.) ← γυνή,この名詞の変化は練習 9 の単語リストを参照.

おそらく実現可能な未来の仮定 (§116.1) であり,そうすると後文 (ἐπιλαθώμεθα) には直説法未来または命令法が用いられるはずであるが,未来のことがらに対する危惧・恐怖の文 (§139.2) によって接続法に変えられている.その際,接続法においてはもはや時称は動作態(アスペクト)の相違を表すものでしかないため (§113),一回的行為としてアオリストが用いられていると考えられる.なお,完了と未来完了は本時称,過去完了は副時称である (Ciesko 8§67).

31-6. 噂好きな人というのは,このような人である:友人に出会い,ただちにほほえんで尋ねる,「君はどこから(きて),いかにしてその状態であるのか,そしてこのことについてある新しいことを言うことができるか?」すると(友人は)ほうっておかずに答えて言う,「君はなにを言っているのか.君は何をも聞いていなかったのか.私にとって,君を新しい噂でもてなすことはよいと思われるのだ.」

正直あまりよくわからなかった.最後の文は,おそらく「新しい噂があるよ」ということが言いたいのだと思われる.

ἀπαντήσᾱς (1aor.part.m.sg.nom.) ← ἀπαντάω.μειδιάσᾱς(マクロン省略)(1aor.part.m.sg.nom.) ← μειδιάω.ἐρωτῆσαι (1aor.inf.) ← ἐρωτάω.ἐάσᾱς(マクロン省略)(1aor.part.m.sg.nom.) ← ἐάω.εἰπεῖν (2aor.inf.) ← εἶπον (2aor.).ἀποκρίνασθαι(マクロン省略)((mid.)1aor.inf.; 流音幹のため σ が脱落: §38.3) ← ἀποκρίνομαι(マクロン省略).

ἀκήκοας (2perf.sg.2.) ← ἀκούω.この動詞はアッティカ式畳音という畳音を行っている (Ciesko 7§24).まず語頭の母音 + 子音を重複させ,次に α, ε を η に,ο を ω にする;ἀκ → ἀκακ → ἀκηκ.時称接尾辞は -α- で第2完了である.υ はなんやかんやあって消滅する.

*1:ἀμὴν λέγω ὑμῖν