猫野詩梨帳

かわいいはかしこい

古典ギリシア語初歩メモ(22 課 〜 26 課)

このメモは練習問題の正答ではないので,必ず↓の記事を先に読むこと.

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22 課

22-1. 私に反対するな.

ἀντιλέξῃς (subj.1aor.sg.2.) ← ἀντιλέγω(反対する).禁止の接続法アオリスト (§114.3).

22-2. それが逃げることをほうっておくのはよそう.

ἐάω 対格 + 不定詞.接続法アオリストだが,1人称(複数)なので提案・要請とした.

22-3. 犬は知らない者たちに吠えかかる(犬は,もしその者たちを知らなければ,その者たちに吠えかかる).

ὧν は関係代名詞の pl.gen. であるが,注にあるように τούτων οὕς として訳した.先行詞である τούτων が省略され,関係代名詞 οὕς が先行詞の格に同化されたものと考えられる(不定関係代名詞のように用いられていると考えても良い).

22-4. 食べよう,飲もう,明日我々は死ぬのだから.

φάγωμεν (subj.2aor.pl.1.) ← ἐσθίω(食べる),πίωμεν (subj.2aor.pl.1.) ← ἔπιον (2aor.) ← πίνω(飲む)

22-5. 愚かなものは,もしあるものがおかしくなければ,笑う.

γελᾷ ← γελάω は subj.pl.3. と ind.pl.3. のどちらかだが(同型なので),ここでは条件文の後文のため直説法であると考えられる (§116).ᾖ (subj.sg.3.) ← εἰμί (§112).

22-6. もし君が彼に金銭を与えて彼を説得するならば,彼は君を賢いとするであろう.

実現可能な未来の仮定 (§116.1).

22-7. 君は出来事(災難,不運)について誰をも非難してはいけない.というのも,運命は共通であり未来は目に見えないからである.

禁止の接続法アオリスト.

22-8. 薔薇は短いあいだ(だけ)盛りである.もし(盛りが)過ぎ去り,(君が薔薇を)探したならば,君は薔薇ではなく茨を発見するだろう.

βαιὸν χρόνον「短いあいだ(だけ)」,期間の対格 (§46.1) .παρέλθῃ (subj.2aor.sg.3.) ← παρέρχομαι(通り過ぎる),例によって変化は ἔρχομαι を参照.εὑρήσεις (fut.sg.2.) ← εὑρίσκω(発見する)より,実現可能な未来の仮定.ζητῶν (part.m.sg.nom.) ← ζητέω(求める,探す)は状況説明の分詞.οὐ...ἀλλά... not...but....

22-9-1. 全ての者(男)が結婚の中で不運であるということは決して無く,また(全ての者が)幸運であるということもない.

οὐ...οὔτε... は否定の強調で,二重否定ではない.練習 13.5 の注を参照.

22-9-2. 悪い妻を手に入れる者は不運であり,良い妻を手に入れる者は幸運である.

τύχῃ (subj.2aor.sg.3.),τυχών (part.2aor.m.sg.nom.) ← ἔτυχον (2aor.) ← τυγχάνω(たまたま……する;[属格]と出くわす,を手に入れる).名詞 τύχη(偶然,運命)と紛らわしいので注意.前半は関係代名詞 ὅς と ἄν,接続法を用いた現在の一般的な仮定「もし彼が悪い妻を手に入れるならば,彼は不運だ」(§116.2, §117).注には ὅς = εἲ τις とあるが,ここは普通に先行詞が省略された関係代名詞として(不定代名詞のように)訳せばよいと思われる.後半は名詞扱いされた分詞 (§100) が主語になった文.

22-10-1. はかない(短命の)ものたちよ.何がある人なのか.何がある人でないのか.

最初の ἐπάμεροι(マクロン省略)は複数呼格と考えられる.

22-10-2. 人は影の夢である.

「人は影の見る夢である」などとも訳されるようだ.

22-10-3. しかし,ゼウスから贈られた光輝が来るときはいつでも,輝く光は男たち(人々)の上にあり,そして平穏な人生も(上にある).

ἔλθῃ (subj.2aor.sg.3.) ← ἔρχομαι(来る,行く),前文が ὅταν = ὅτε ἄν によって導かれる現在の一般的な仮定 (§116.2, §117).訳は「……のときはいつでも……である」とした.ἔπεστιν (sg.3.) ← ἔπειμι,この動詞の活用は εἰμί を参照 (§54).

23 課

23-1. 君が幸運だったらなあ.

23-2. キューロスが生きていればなあ.

注にあるように,ὤφελε (2aor.sg.3.) ← ὤφελον (2aor.) (← ὀφείλω) と不定詞を用いた実現不可能の願望.ζῆν (inf. この動詞は特別の母音融合を行う;練習 14 の単語リスト参照) ← ζάω(生きる).

23-3. 手紙を送らなければよかったなあ.

23-2 の注にあるように,εἱ γὰρ + 直説法アオリスト で過去の実現不可能の願望を表す.ἔπεμψα (1aor.sg.1.) ← πέμπω(送る).

23-4. 罰せられないように,不正者たちは逃げた.

ἔφυγον (2aor.pl.3.) ← φεύγω(逃げる).δοῖεν (opt.2aor.pl.3.) ← δίδωμι(与える)(§118.6).ὡς による目的表現 (§123).

23-5. おお,不運な者よ.君が決して,君が誰なのかということを知ることがなければよいのだが.

δύσποτμ' は単数呼格 δύσποτμε であると考えられる.ὅς は関係代名詞だが,ここでは疑問代名詞として用いられていると思われる (§64.3).γνοίης (opt.2aor.sg.2.) ← γιγνώσκω(知る)の変化については §187 を参照.

23-6. いかにしてある人は小さい苦労で大きいものをつかまえられるのだろうか.

ἕλοι (opt.2aor.sg.3.) ← εἷλον (2aor.) ← αἱρέω(取る,つかまえる),ἄν を伴った可能性の希求法.与格は手段の与格 (§14.3).

23-7. 君が最も楽しく時をすごせるように,わざと君を鼓舞しなかったのだ.

ἤγειρον (impf.sg.2.) ← ἐγείρω(目を覚まさせる,鼓舞する).διάγῃς (subj.sg.2.) ← διάγω(時を過ごす,暮らす).接続詞による目的表現で,主文の動詞が副時称の場合従属文は希求法だが,接続法のこともある (§123).ἥδιστα は ἡδύς(甘い)から作られた副詞の最上級 (§72).

23-8. もし君の召し使いたちのある人が病めば,君は彼が死なないように医者たちを呼び寄せるか?

ἀποθάνῃ (subj.2aor.sg.3.) ← ἀποθνῄσκω(死ぬ).接続法を用いた現在の一般的な仮定 (§116.2) と,接続詞 ὅπως を用いた目的表現 (§123).注にあるように,σοι はここではほぼ σου の意味らしい.よって τίς σοι (= σου) τῶν οἰκετῶν「君の召し使いたちの(中の)ある人」.不定代名詞 τὶς は前接辞,σοί も前接辞なので,τὶς が σοί からアクセントをもらっている (§50.5).

23-9. へーラクレイトスはどこかで言っている,すべてのものは進み,とどまるものは何もないということを,そして存在するものたちを川の流れになぞらえることによって言っている,君は二度同じ川の中へ踏み入れることはできないということを.

ὄντα (part.n.pl.acc.) ← εἰμί (§97),ここでは定冠詞がついているため名詞扱いされた分詞と考え,「存在するものたち」と訳した (§100).ὡς はおそらくここでは単に間接話法を導く「……ということ」であり,ἄν を伴って可能性を表す接続法であると思われる (§121.2).αὐτὸν は限定的位置に置かれているため,「同じ」の意 (§67.2).

23-10-1. 君が常に私を見るために私が鏡であったらなあ,君が常に私を身にまとえるように私が肌着になれればなあ.

εἴην (opt.sg.1.) ← εἰμί (§119).γενοίμην については注を参照.実現可能な(?)願望を表す希求法と,目的表現の接続法.ἀεὶ は ἀ にマクロンを付け忘れていると考えられる.詩文なので意図的の可能性も?

23-10-2. 君の肌を洗うために,私は水になりたい.

肌において君を洗うために,私は水になることを欲する.注を参照.λούσω (subj.1aor.sg.1.) (← λούω 洗う) は ind.fut.sg.1. と同形.23-10-3 で呼格が使われていることから考えると,ὕδωρ は呼格かもしれない.

23-10-3. 香油よ,女よ,私が(それらに)なれればなあ,私が君に塗るために.

γύναι (f.sg.voc.) ← γυνή(女,妻),この名詞は少し特殊な変化をする(練習 9 の単語リストを参照).μύρον も呼格であると考えられる.ἀλείψω (subj.1aor.sg.1.) ← ἀλείφω(塗る)は ind.fut.sg.1. と同形.

24 課

24-1. 彼が私を見るときはいつでも,私は逃げていた.

前文が関係副詞 ὁπότε によって導かれた過去の一般的な仮定 (§124.2, §125).ἴδοι (opt.2aor.sg.3.) ← εἶδον (2aor.) ← ὁράω(見る).

24-2. 彼は,彼(自身)にとって良いと思われることを(いつも)行っていた.

ἃ は関係代名詞だが,先行詞が省略されて不定関係代名詞のように用いられていると考えられる (練習 22-3 の注を参照).前文が関係代名詞によって導かれた過去の一般的な仮定 (§124.2, §125).δόξειεν (opt.1aor.sg.3.) ← δοκέω(思われる,よいと思われる,決議する),この動詞の動詞幹は δοκ だが,現在幹をつくる際には ε が付加される(Ciesko 7§59.31).

24-3. 彼は,何を言えばいいのか困ったので沈黙した.

λέγῃ (subj.sg.3.) は思案・熟慮の接続法 (§114.2) であると考えられる.もとの直接話法では1人称であったのが,間接話法で3人称に変わっている.主文の動詞 ἐσίγᾱ (impf.sg.3.)(マクロン省略) ← σῑγάω(沈黙する) は副時称であるが,接続法は(希求法に変えてもよいが)そのままでよい (§128.2).

例)ἔφη,“τί λέγω.”「“私は何を言えばいいのだろう.”と彼は言った.」(λέγω: subj.sg.1.)

ἔφη τί λέγῃ.「何を言えばいいのだろうと彼は言った.」(λέγῃ: subj.sg.3.)

24-4. 誰がそんなことを言っているんだろうねと彼は戯言を言っているんだよ,と彼は言った.

ὅστις は疑問代名詞として用いられていると考えられる (§64.3, §129).希求法現在形になっている φλυᾱροίη, λέγοι はもとの直接話法では直説法現在形か接続法現在形である.

24-5. あの者の後で,第二の者を,誰であるかを見たかとクロイソスは尋ねた.

ἠρώτᾱ (impf.sg.3.) ← ἐρωτάω(尋ねる).ἴδοι (opt.2aor.sg.3.) ← εἶδον (2aor.) ← ὁράω(見る).

24-6. もし私が恩人を追い出すようなことがあれば,彼は私を褒めないだろう.

24-7. もし君が友人を持つようなことがあれば,私は君が幸福であるということを認めるだろう.

νομίζω (opt.sg.1.) 対格 + 不定詞

24-8. 唯一クレアルコスのみが,支配者が考えねばならぬような事々を考えているということを,彼らは見ている.

δεῖ 対格 + 不定詞で,不定詞 (φρονεῖν) が省略されていると考えられる.また関係代名詞 οἷα の先行詞も省略されている.μόνος が「ただ……のみ」のように使われているのは練習 19-3 と同様.

24-9. (一方)他の人間たちは食べるために生きているが,(他方)自分は生きるために食べているのだ,とソクラテスは言った.

例によって ζῆν (inf.) ← ζάω(生きる)は特別の母音融合を行う(練習 14 の単語リスト参照),ただし ζῇ はここでは subj.sg.3.(ζάω は能動相直説法と能動相接続法が全て同形).いつもの ἔφη 対格 + 不定詞 の構文だが,αὐτὸς は対格ではなく主格になっていることに注意.これは,不定詞の主語と主動詞の主語が等しいために不定詞の主語が表されていないことによる.このとき,補語は全て主文の主語と同じく主格になる (Ciesko 8§12).

例)

οὗτος σοφός ἐστιν.「こいつは賢い.」:補語 σοφός は 主語 οὗτος に格が一致し,主格

ἔφη τοῦτον σοφὸν εἶναι.「こいつは賢いんだと彼は言った.」:不定詞の主語の補語 σοφὸν は不定詞の主語 τοῦτον に格が一致し,対格

ἔφη σοφὸς εἶναι.「俺は賢いんだと彼は言った.」:補語 σοφὸς は主文の主語と同じ,主格

ἔφη αὐτὸς σοφὸς εἶναι.「俺は賢いんだと彼は言った.」:補語 αὐτὸς と σοφὸς は主文の主語と同じ,主格

24-10. ダーレイオスが死にアルタクセルクセースが王になった時,ティッサペルネースは,兄弟に向かって陰謀を企てているとしてキューロスを中傷する(した).

κατέστη (2aor.sg.3.) は καθίστημι(据える,……の状態にする)の第二アオリストで「……になる,……に落ち着く」という意味であるが, ここでは κατέστη εἰς τὴν βασιλείᾱν で「王国の中へ落ち着いた」→「王になった」くらいの意味であると考えられる.また,歴史的現在は副時称と見做されるため ἐπιβουλεύοι が希求法になっている (Ciesko 8§67).

25 課

25-1. 全てのことは時間によって裁かれる.

25-2. 私は常に多くのことを教わりながら(教わることによって)老いる.

διδασκόμενος (mp.part.m.sg.nom.) ← διδάσκω(教える)

25-3. 彼らは,彼ら自身がそれらのことを被るのではないかと恐れた.

未来のことがらに対する危惧・恐怖 (§139).πάθοιεν (opt.2aor.pl.3.) ← ἔπαθον (2aor.) ← πάσχω(被る,経験する).

25-4. というのも,青春は夢のように君を通り越してしまうからである.

παρέρχεται (mp.sg.3.) ← παρέρχομαι(通り過ぎる,経過する,到着する)は ἔρχομαι と同様に中・受動相で用いる(現在形の場合).

25-5. 彼らは,案内人が,そこから出てこれないだろう場所へ連れて行くことを恐れている.

ἔσται (fut.sg.3.) ← εἰμί(……である,存在する,可能である),εἰμί + 不定詞 で「〜できる」.ἐξελτεῖν (2aor.inf.) ← ἐξῆλθον (2aor.) ← ἐξέρχομαι(出て来る,出て行く),この動詞の変化は ἔρχομαι を参照.ἀγάγῃ (subj.2aor.sg.3.) ← ἤγαγον (2aor.) ← ἄγω(導く,連れて行く).ὅθεν は「そこから」とあるが,先行詞(場所)が省略された関係副詞「そこから……であるような場所」として用いられている(英語の whence).

例)ὑποστρέψω εἰς τὸν οἶκόν μου ὅθεν ἐξῆλθον.「私は,私が出てきた私の家(私がそこから出てきた場所であるところの私の家)へ帰る.」(ὑποστρέψω 引き返す,方向転換する)(ルカによる福音書 11 章 14 節)

25-6. (一方)立法者は法を制定するが,(他方)民衆は彼ら自身のために法をつくる.

τίθεται (mp.sg.3.) ← τίθημι(置く,つくる,制定する,……にする)を受動と考えると対格の νόμους がよくわからないので,中動と考えた.

25-7. おお客人よ,我々はあの者たちの言葉に従ってここに横たわっているということをスパルタ人に告げよ.

ἀγγέλλειν (inf.) は注にあるように命令を表している.πειθόμενοι (mp.part.m.pl.nom. [与格]に従う) ← πείθω(説得する).

25-8-1. まさに人生を終えようとしている,そして子どもたちに畑仕事の経験があることを欲している農夫が,彼ら(子どもたち)を呼び寄せて言った:「おお子どもたちよ,ぶどう畑の中に宝が隠されている.」

βουλόμενος (mp.part.m.sg.nom) ← βούλομαι(欲する;能動相欠如動詞) 対格 + 不定詞 (εἶναι) の構文.προσκαλέσᾱς (1aor.part.m.sg.nom.) ← προσκαλέω(呼び寄せる),この動詞の変化は καλέω を参照.

25-8-2. そして父の死んだ後,子どもたちは鍬を取ってぶどう畑のすべての大地を掘り返した.

λαβόντες (2aor.part.m.pl.nom.) ← λαμβάνω(取る,つかまえる).κατέσκαψν (1aor.pl.3.) ← κατασκάπτω(掘り返す).最初の οἱ は子どもたち (οἱ παῖδες) を指していると思われる.

25-8-3. しかし一方彼らは宝を発見することはなかったが,他方ぶどう畑は,彼らがよく掘ったために,多くの収穫を彼らに返した.

εὗρον (2aor.pl.3.) ← εὑρίσκω(発見する).σκαψάντων (1aor.part.m.pl.gen.) ← σκάπτω(掘る),独立的用法の分詞 (§108.1).ἀπέδωκεν (2aor.sg.3.) ← ἀποδίδωμι(返す),変化は δίδωμι を参照.

25-8-4. この話は,人にとって苦労は宝であるということを明らかにしている.

26 課

26-1. 徳はそれ自身に従って立派である.

26-2. みじめな私,私は死んでしまった(も同然),私はもはや何でもない.

ἀπωλόμην (mid.2aor.sg.1.) ← ἀπόλλῡμι

26-3. おまえたちが自由の価値がある男たちであるよう,よく考えよ.

注にあるように,σκοπεῖτε (imp.pl.2) ← σκοπέω(よく見る,熟考する).ἔσεσθε (mid.fut.pl.2.) ← εἰμί,未来形は中道相である (§138).配慮・努力を表す文(§144).

26-4. アテーナイ人が攻撃すると,シュラークーサイ人は退き,(アテーナイ人が)退くと,(シュラークーサイ人は)追撃していた.

過去の一般的な仮定 (§124.2).ἐπίοιεν (opt.pl.3.) ← ἔπειμι(やって来る,向かっていく,攻撃する;ἐπί + εἶμι),この動詞の変化は εἶμι を参照.同形の ἔπειμι(……の上にある;ἐπί + εἰμί)に注意,こちらの変化は εἰμί を参照.ὑπεχώρουν impf.pl.3.,ἀναχωροῖεν opt.pl.3.,ἐπέκειντο (mp.)impf.pl.3.

26-5. 母親は父親(が我が子を愛する)より一層我が子を愛する.というのも,一方母親は(子供が)自身の子であると知っているが,他方父親はそう考えるからである.

母親は自分で子を産むため自分の子であるということを知っているが,父親は自分が産むわけではないため自分の子だろうと考えるだけである(しかできない)ということ.

形容詞を比較級・最上級にする代わりに,原級に副詞 μᾶλλον (more), μάλιστα (most) を添えることでも比較級・最上級が作れる (Ciesko 3§26).πατρός は比較の属格 (§73.2).ἡ, ὁ はそれぞれ母親と父親のことを指していると考えられる.ὄνθ' ← ὄντα (part.m.acc.) は εἰμί の現在分詞 (§97) で,οἶδεν ((2perf.)sg.3.) ← οἶδα(知っている)があるので分詞を用いた間接話法 (§110.3) である.οἶδεν [τὸν παῖδα] [τὸν αὑτῆς παῖδα] ὄντα.「彼女は知っている,[その子供]が[彼女自身の子供]であるということを.」

26-6. インド人たちが入ってきて,インド人たちの王が,戦争は何の中からあるのか尋ねることを命じて彼ら(インド人たち)を送ったということを言った.

εἰσελθόντες (2aor.part.m.pl.nom.) ← εἰσέρχομαι(入ってくる),この動詞の変化は ἔρχομαι を参照;また λείπω と同様にアクセントが -όντες となる (§96).ἔλεξαν (1aor.pl.3.) ← λέγω(言う).πέμψειε (opt.1aor.sg.3.) ← πέμπω(送る).ἐρωτᾶν (inf.) ← ἐρωτάω(尋ねる).εἴη (opt.sg.3.) ← εἰμί (§119).ὅτου (n.sg.gen.) は不定関係代名詞であるが,ここでは疑問代名詞として用いられていると考えられる (§64.3);ἐξ ὅτου (from what).希求法は間接話法の主文の動詞が副時称であるため使われていると考えられる.

26-7-1. しかし彼らは,正しくそしてよく熟慮して,名誉や栄光のために自身を恐ろしい事々に与えることを欲していた.

ἤθελον (impf.pl.3.) ← ἐθέλω(欲する).διδόναι (inf.) ← δίδωμι(与える).βουλευόμενοι (mp.part.m.pl.nom.) ← βουλεύω(相談する,計画する,[中]熟慮する).εὐδοξίᾱ と τιμή は共に「名誉」となっているが,多少ニュアンスが異なるのであろう;ここでは「名誉と栄光」と訳した.

26-7-2. というのも,たとえ小部屋の中である人が自分自身を閉じ込めて見張っていたとしても,すべての人間の人生の終わりは(結局)死であるからである.

καθείρξᾱς (1aor.part.m.sg.nom.) ← καθεῖρξα (1aor.) ← καθείργνῡμι(閉じ込める;κατά-εἵργνυμι),この動詞は δείκνῡμι (§94) と同じように変化する,即ち第1アオリストでは -νῡ- が落ちる.τηρῇ (subj.sg.3.) ← τηρέω(見張る,警戒する),現在の一般的な仮定 (§116.2).

26-7-3. しかし,立派な男は(一方)常に全ての立派なことに手を出さなければならない,(他方)立派な希望を前面に押しだして(盾として),神の与えるどんなことにも気高く耐えねばならない.

δεῖ(+ 対格)+ 不定詞 の構文,不定詞は ἐγχειρεῖν と φέρειν.διδῷ (subj.sg.3.) ← δίδωμι(与える),不定関係代名詞 ὅ τι と ἄν を伴って,現在の一般的な仮定 (§116.2, §117) だが,無理に「もし〜」と訳さなくてもよいだろう.